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Amazon Bedrock Flowsが進化:長時間実行フローで生成AIの業務自動化が現実に

Amazon Bedrock Flowsにおける長時間実行フローのパブリックプレビュー対応について

Amazon Web Services(AWS)の生成系AIサービスであるAmazon Bedrockは、開発者が大規模言語モデル(LLM)を活用してAIアプリケーションを簡単に構築・デプロイできるように設計されています。そのうちの一つである「Amazon Bedrock Flows」は、生成AIアプリケーションにおけるワークフローロジックを視覚的に設計・管理できる機能モジュールです。

そして今回、Amazon Bedrock Flowsは新たに「長時間実行フロー(long-running execution flows)」のパブリックプレビューを開始しました。これにより、従来の短いリクエスト・レスポンスサイクルを超え、より複雑で時間を要する処理にも対応できるようになりました。

この記事では、Amazon Bedrock Flowsの長時間実行フロー対応がどのような背景で実現され、どのような利点を持ち、実際のユースケースとして何が想定されるのか、技術的な観点やユーザー活用方法も含めて詳しく紹介していきます。

Amazon Bedrock Flowsとは何か?

まず前提として、Amazon Bedrock Flowsは、AIアプリケーション構築におけるプロンプトチェーンや複数ステップのタスクを効率的に設計・管理するための仕組みです。視覚的なワークフロービルダーを通じて、複数のモデル呼び出し、条件分岐、入力や出力の変換、外部APIとの連携などをGUI上で直感的に作成できます。

従来の生成AI利用では、例えばユーザーが質問を入力し、チャットボットがそれに即時応答するような「即時実行型」が中心でした。しかし、現実のビジネスシナリオやエンタープライズ用途においては、もっと複雑な対応が求められるケースが多々あります。たとえば複数の外部システムからデータを取得し、解析し、ユーザーが承認フローを踏んだ後に次のアクションを実行するなど、一連の処理に時間がかかるものが増えているのです。

こうした複雑かつ時間を要するワークフローのニーズに応えるべく誕生したのが、長時間実行フローの機能なのです。

長時間実行フローとは?

長時間実行フローとは、その名のとおり処理の完了までに数分から数時間、あるいはそれ以上かかることを前提とした自動化されたワークフローのことをいいます。

Bedrock Flowsにおけるこの新機能は、状態を保持しながら中断・再開が可能なフロー設計を可能にしています。一度開始されたフローは、途中でユーザーの入力待ち状態、あるいは外部システムからの応答待ちといったイベントに応じて「一時停止」し、その後必要なトリガーが与えられたタイミングで再開するという仕組みです。

言い換えれば、常に高速なレスポンスを前提としない、より柔軟性の高い生成AIアプリケーションが構築できるようになったということです。

このアプローチには、いくつかの技術的なポイントがあります:

– 状態の永続性: フローの実行状態が保存され、システム再起動や他のトランザクションによる影響を受けにくくなっています。
– イベント駆動型のコントロール: 外部からのWebhookやユーザー入力をきっかけにフローが再開でき、分散システムとの連携がスムーズに。
– タイムアウト/失敗処理の柔軟性: 長時間フローにおいて不可避なネットワーク不通なども想定し、待機時間や失敗時の挙動の設定が可能。

活用シナリオの例

このような長時間実行フローは、さまざまな業界やユースケースに応用できます。いくつか具体的な例を挙げてみましょう。

1. ドキュメント処理と意思決定フローの自動化

従来、契約書などのレビューと承認には人による中間プロセスが必要でした。まずLLMで契約書を要約し、内部の意思決定者が内容をレビューした上で承認、その上で何らかのワークフローを起動するといった作業が数日単位で進行します。このような処理を、Bedrock Flowsの長時間実行フローで設計すれば、各工程を自動フロー内に組み込むことができ、進行状況の可視化と効率化が同時に実現します。

2. 顧客対応のケースマネジメント

カスタマーサポートでは、チャットボットが初期問い合わせを受けた後に、内部調査を始め、時にはエスカレーションを行い、数時間〜数日後に対応完了まで持って行く必要があります。長時間実行フローを使えば、初回問い合わせから最終解決までの全スパンを一つのワークフローとして管理・追跡することが可能になります。

3. 分散システムとの非同期連携

たとえば外部APIとの通信を伴うアプリケーションでは、レスポンス完了までに時間がかかることが一般的です。その間の状態を管理しつつ、レスポンスが帰ってきた時点で処理を継続するというシナリオは長時間実行フローが非常にマッチします。

フロー構築の実用的なポイント

Bedrock Flowsにおける長時間実行フローの設計においては、いくつかのベストプラクティスが紹介されています:

– フロー上に「Pause」ノードを挿入することで、外部のデータやユーザー入力を受けるための中間ステップを定義できる。
– 一時停止状態に入ったフローは、自動的には再開されず、指定されたAPI(ResumeFlowExecution API)などを使って明示的に再開される。
– 最大30日間の状態保持がサポートされており、長期にわたるビジネスプロセスも構築可能。
– Flow Execution Event APIを通じて、フローにイベントを渡すことができるため、完全な非同期処理が可能となる。

つまり一度デザインされたフローは、AIによる連続的な処理だけでなく、「人間による判断」や「外部の情報」が必要なタイミングで待機・停止を行い、全体のプロセスとして一貫性と柔軟さを両立することができます。

安全性とガバナンス

長時間にわたりシステムが状態を保持し、イベント待ちをするという性質上、セキュリティやガバナンスの観点も非常に重要となります。

Bedrock Flowsでは、IAMベースのアクセス制御や監査ログの保管、また利用モデルにおける責任分界モデルも整っているため、企業のコンプライアンス要件を満たす生成AIアプリケーションの運用が可能です。

おわりに

Amazon Bedrock Flowsにおける長時間実行フローの登場は、生成AIのエンタープライズ活用を次のフェーズへと導く重要な一歩だといえます。瞬間的な応答だけではなく、時間軸にまたがる複雑な業務プロセスや意思決定フローにまでAIを組み込めるようになることで、多くの業務自動化やサービス向上が期待されています。

ビジネスの現場では、すぐに答えを出すだけではなく、「待つ」「考える」「確認する」「判断する」という人間らしい処理も含まれています。Bedrock Flowsの新機能は、こうしたリアルな業務の動きを生成AIの枠組みでありながら自然にモデル化できる世界を提供してくれるのです。

これからの生成AI活用を本格化させたいと考えている開発者や企業にとって、長時間実行フローという選択肢はまさに新しい可能性を切り拓いてくれる機能といえるでしょう。Amazon Bedrock Flowsの今後の進化にも大いに注目していきたいところです。

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